紅ユリの恋


「優し過ぎるんですよ。その優しさを私だけに向けて欲しいなんてつもりは……ないと言ったら嘘になりますけど、そこまでは言いません。でも……女の人が相手だと誰にでも優しいんですよね……。女性が困っていると手を貸さずにはいられない人で。昔はそれでも、ナンパとかセクハラって行動に走るところがあったから、相手にされることもなくて、私としても安心して見ていられたんですけど、最近は……私と付き合うようになってからは、私に気を使ってくれてるのか、女性に飛びつくってことはなくなったんです。
 そうなってくると女の人に悪い印象を与えることもなくなって、いえ、逆にウケがいいもんだから、あからさまに誘ってくるお客さんだっているんです。美神さんたちがしっかりと釘を刺してくれるし、本人も戸惑ってるみたいだから、それでどうこうなってしまったことはないんですけど。
 ……不安なんですよね。いつか誰かに取られちゃうんじゃないかって。身の回りにもまだ狙ってる人がいそうだし……。それでついヤキモチ焼いちゃって、私がすぐ怒るもんだから遠慮してるみたいなんです。私の前ではあんまり他の女の人とは話したりしなくなったんですけど、私のいない所で昔みたいに女の人に声をかけてるんじゃないかって……疑心暗鬼って言うんでしょうね、こういうの。
 私のせいで窮屈な思いしてるんじゃないか、嫌気が差してるんじゃないか、愛想尽かされちゃうんじゃないかって。わかってるんです。自分がすごくイヤな女になっちゃったって。でも……女の人と楽しそうに喋ってるのを見るとついカッとなっちゃうんです……。
 どうすればあの人の気持ちをつなぎ止めておけるんだろう? 嫌われないでいられるんだろうって不安で仕方がないんです」



「それで……私に相談に来たってわけね」
 そう言うのは横島忠夫の母・百合子である。とても高校を卒業した息子がいるとは思えない若々しさである。
「ええ。前にお話を伺った時に、横島さんのお父さんもそんな感じだったのかなあって思って。それに……お父さんがいらした時だって、あの美神さんが舞い上がっちゃってデートのお誘いを受けてましたし」
「あのヤドロク、そんなことをしていたの。いいわ。帰ってきたら……」
 目だけは笑っているものの拳に怒りを滲ませている百合子。隠し事はこういうちょっとしたことから露見するものである。
「……ま、それはいいとして」
 百合子は、目の前にうなだれて座っている息子の恋人を見つめた。不安に苛まれ、今にも涙をこぼしそうなその様子は痛々しくさえある。あの息子のこと、こんなおキヌの姿を見ればそれだけでバッチリ浮気心などどこかに吹っ飛んでしまいそうなものだが……。
(……ったく、女の子をこんなに悩ませるなんて、忠夫もやっぱりうちの子ね)
 百合子は溜息をついた。アノ夫の息子であることを考えれば、おキヌの心配もよくわかる。だが、息子の性格を考えれば、おキヌを裏切るような真似はきっとできないはずだ。スケベなところは父親譲りだとしても、女を泣かせるような男に育てたつもりはない。その点ではそれなりに自信があるから、おキヌの心配も杞憂に過ぎないと考えられる。
 だが……それで済ましても当のおキヌが納得できないのではないか?
「わかったわ。ちょっと長くなるけど、話してあげる。私とあのヤドロクの馴れ初めをね」



「紅井さんですね」
 威勢の良い声が聞こえ、紅井百合子は書類から顔を上げて声の聞こえた方を振り向いた。そこには研修を終えたばかりの新入社員らしき男が真新しいスーツに身を包んで立っている。短く刈り揃えた髪に眼鏡をかけたその男は、端正とは言えないまでも意志の強そうな表情をしている。新入社員特有の緊張を感じさせない辺りはなかなかの大物なのかも知れない。
「何かしら?」
 冷ややかに男を見据えながら百合子は尋ねた。
「ずっと前から愛してましたーーっ!!」
 男はそう叫びながらいきなり百合子に飛びかかった。
 ボクッ!! 鈍い音を立てて男は床に沈む。
「用件があるなら手短に済ませてもらえるかしら?」
「あ、あの……今日からお世話になる横島です……って言うつもりだったんですが、あまりの美しさについ……」
 床に突っ伏したまま呻くように男が言う。その言葉にさすがの百合子も目を丸くした。
「あんたが? 私の? 部下?」
 文節ごとに疑問符をつけながら百合子が尋ねる。
「はい……」
「……」
「……」
「辞表の用意をしといて」
「ああっ!! 入社早々クビっ!?」
「当たり前でしょっ!? あんたみたいなのが部下なんて冗談じゃないわ! こうなったら社長に直談判して配置換えしてもらうんだからっ!!」



「紅井くん、君の気持ちもわからんでもないがね、そうホイホイと配置換えなんてできるわけないだろう。ましてや横島くんは新入社員なんだよ」
 さすがに社長に一蹴された。もっとも、社長に対して直談判が許される時点で百合子が並みのOLではないらしいことが推察できるのだが。
「でも社長、セクハラですよ、セクハラ!! 普通なら問答無用でクビでしょ!? だいたい部下が上司に対してなんて、本来セクハラですらない、ただの痴漢行為ですよ!!」
 怒り心頭の百合子。そんな百合子を村枝社長が宥めながら言う。
「そこが問題なんだよ。そもそも今がいつだと思っているのかね。少なくとも1982年より前であるから、『セクハラ』なんて言葉はまだ日本には入ってきていないんだよ」
 さり気なく危険な発言。ちなみに「セクシャル・ハラスメント」という語が日本に上陸したのは1989年の夏頃と言われている。ついでに1999年の原作連載終了時点で17歳の横島忠夫が一応のところ1982年生まれと考えられることをつけ加えておこう。
「そんなことはどうでもいいのっ!! だいたい平安時代の時だってあり得ない単語を使って会話していたじゃないのっ!?」
 ああッ、もうやめて。これ以上この世界を壊さないで。
「……と、ともかくだね、横島くんはあれでも一番優秀な新入社員なんだよ。こんな人材を放り出してライバル社に拾われたくはない。多少のことは目を瞑りなさい」
「では社長、『個人的』に処罰を行っても目を瞑っていただけますか?」
 諦め半分で提示する百合子。
「ん? まあ仕方ないだろう。しっかりと教育してやってくれたまえ」
 どうやらセクハラを黙認されつつも血の海に沈むことが確定したようである。



「どうでした?」
 そんな社長室でのやり取りを知らない横島大樹が百合子に結果を尋ねた。
「不本意だけど、当分は私の下で働いてもらうことになったわ」
「と言うことは……『百合子』と呼んでいいんですねえっ!!」
 他者に理解不能の論理展開で「横島カンゲキ!!」などと叫びながら再び百合子に飛びかかる大樹。
「その代わりお仕置きの免状をもらったから、覚悟しときなさい。それと、私のことは『紅井さん』と呼ぶように」
 まるで埃でも払うように大樹を壁に叩きつけながら百合子が静かにそう言った。
「あの……『百合子さん』じゃダメですか? その……海外が長かったもので、苗字で呼ぶのには慣れてなくて」
 その時に浮かんでいた意外なほど真摯な表情に、百合子は一瞬目を奪われた。ただのスケベ男かと思ったけど、こういう顔もできるのか、そんな感情に言葉を忘れて立ち尽くす。
「ダメ……ですか?」
 返事がないことに不安げに問い直す大樹。百合子がお仕置きの手段を考えているものと思っているようだ。
「……勝手にしなさい! ほら、出かけるわよ!」
 我に返ってそう言うと、百合子は書類カバンを持ってオフィスを出て行った。
「待ってくださいよ、百合子さん♪」
 嬉しそうにそう答えてついていく大樹。



 そんな出会いだったものの、いざ仕事を始めてみると百合子と大樹のコンビは相性がよく、営業成績は社内トップをダントツでひた走っていた。
「百合子さ〜〜ん!!」
「上司にセクハラすんなって何万回言わせるのっ!?」
 こんな風景ももはや社内の名物となり、たとえ大樹が血の海に沈もうとも、オフィスの壁にヒビが入ろうとも、気にする者は誰もいなくなった。
 そして今日も新たな取引先を求めてふたりは走り回っている。
「……あ、そのビルよ。そこの駐車場に入ってちょうだい」
 百合子がとある工業メーカーの本社ビルを指し示しながらそう言う。大樹は言われた通りに車を近くの駐車場に入らせた。
「この会社はね、今のところ原料を四井物産から買ってるのよ。で、うちがその取引を頂こうってわけ」
 車を降りながら百合子の言葉を聞き、大樹は身を震わせた。大手のライバル会社から取引を奪取する、これほどの仕事となると大樹ほどの図太い神経でも緊張するものらしい。武者震いというものである。
「へえ、あんたでも上がったりすんのね。でも交渉のメインは私がやるわ。あんたはサポートをお願いね」
 大樹の様子に苦笑しながら百合子が言った。
「百合子さん……」
「何?」
「景気づけに一発……ぶっ!!」
 いきなり飛びかかろうとして地面に叩きつけられる大樹。
「さっさとついて来なさい!」
 地面に伸びている大樹を放ってさっさとビルの入り口に向かっていく百合子。
「あ、ちょっと、百合子さん。待ってくださいよ〜〜」
 早くも復活して後を追う大樹であった。



「ふむ、ご提示の条件はわかりました。確かに当社にとっても有益な話ではあります。とは言いましても、四井さんとも長い付き合いでしてね……」
 中年の担当者が言葉を濁しながらそう言う。爬虫類を思わせるいやらしい視線に加えて不似合いに長い髪が気持ち悪さを際立たせている。その視線は百合子をジロジロと舐め回すように動く。百合子は顔まで鳥肌をゾクゾクと立てそうになるのを必死で堪えながらニコニコ笑っていた。
 担当者は尚も百合子たちの感情を逆撫でするかのような流し目で続けた。
「まあ、当社としても魅力的な話ですし、ぜひもっと詳しくお話を伺いたい。紅井さん、でしたかな? もしよろしければふたりきりでお話がしたいのですが?」
(このクソオヤジ……。あ、ダメ、もうそろそろ限界。我慢、我慢よ百合子、どうにかやんわりと話を仕事の方に……)
 などということを裏で考えながら百合子は、遠慮なくいやらしい視線を向ける相手に愛想笑いを向け、口を開いた。
「ぜひともこちらの書類をよくご覧になりまして……」
「そうですな。今晩改めてお食事でもしながらゆっくりとお話ししませんか? ふたりで、ね」
 その後はわかってるよね、と言わんばかりの目つきで言い募る担当者。
 プチン。さしものスーパーOL百合子もキレた。
「この……」
「このエロオヤジがああっ!! いいかテメー、この女は俺んだ。いやらしい目つきでジロジロ見回してんじゃねえっ!!」
「いつアンタの女になった!?」
 バキッ! 大樹を床に沈めながら百合子は立ち上がった。
「また日を改めてお伺いしますわ。失礼いたします」
 そう言って伸びた大樹を引きずりながら部屋を出ていく。



「どうもすみませんでしたっ!!」
 会社に戻って平謝りに謝る大樹。
「いいわよ。向こうの態度にも問題はあったんだし……」
 溜息をつきながらも強くは言えない百合子。何しろ自分もキレていたところなのだ。大樹が一瞬早く飛び出したおかげで冷静に返ったわけだが、そうでなければ自分がやっていただろう。その場合、もっと酷いことになったかも知れない。
 が、次の大樹の言葉に百合子の顔色が変わった。
「ここは俺が責任持って契約取りつけてきますっ!!」
「ちょ、何言ってんのよ!? あんだけやらかしたら商談はチャラに決まってるでしょ!? これ以上余計なことはしない方がいいわ!」
「でも、ここで引き下がるのも悔しいじゃないっスか?」
「そうだけど……。あんたに説得なんてできるの!? たぶんカンカンに怒ってるわよ」
「じゃあ……うまくいったら僕とデートしてくれますか?」
 言ってることがエロオヤジ、もとい、例の担当者と大して変わらない大樹。だが、今度は百合子の方も苦い顔ではない。こんな時に軽口を叩く大樹に呆れながらも少しだけ頬を染めていた。それに……この男なら本当にどうにかしてしまうかも知れない、そんな気もしていた。
「……わかったわ。そこまで言うんならやってみなさい。この状況で契約が取れるもんならデートでも何でもやってあげるわ」
「何でもっスか!?」
「言葉の綾よ! でもデートくらいならやってあげるから、せいぜいがんばんなさい!!」
「ありがとうございます! そうと決まったら俺はやるぞっ!!」
 そう言いながら飛び出していく大樹。
「あ、ちょっと……」
 やれやれ。相変わらずとんだ部下ね。百合子は溜息をつきながらもまんざらでもなさそうな笑みを浮かべていた。



 こざっぱりした夜のバー。一組の男女がカウンターの一角を占めていた。ふたりの前には淡い色をしたロゼのシャンパンが置かれている。
「まさか、ホントに契約取っちゃうとはね……」
 呆れ顔で呟いてシャンパンを口にする百合子。
「ちっちっ、僕を甘く見ちゃダメですよ。百合子さんとデートするためならどんな手を使ってでもやって見せますから」
「だからってあんた……」
 そんな手を使わなくても……そう言いかけて口をつぐんだ。
 大樹は脅迫じみた方法で相手に迫ったのである。優秀なキャリアウーマンである百合子のやり方を学ぶため、大樹は交渉の現場でテープレコーダーを回していた。もちろん例のやり取りもきっちりと録音されていたのである。例の担当者も『今晩』だの『ふたりで』だのと下心丸出しの言葉を吐いていたし。だが、それをネタに契約を直に迫ったわけではない。商談の詳細を上に通すよう求めたのである。それくらいならと相手も折れた。
 そこから先は完全に正攻法で、大樹の本領発揮であった。村枝商事との取引のメリットを巧みに説き、見事、契約を取りつけることに成功したのであった。取りかかりのやり口はともかくとして、その後の交渉手腕は百戦錬磨の百合子でさえ舌を巻くものだった。あの社長がセクハラを黙認してでも止めておきたくなるわけだ。それに、これほどの男の上司など百合子にしか務まらないと考えても不思議はない。
「百合子さんとこうしてデートができるんなら、これからももっと頑張っちゃいますよ」
 ヘラヘラと軽薄な笑みを浮かべながら大樹が言った。
「……」
「あ、もしかして百合子さん、恋人がいました? だったら……」
「……いないわ」自分でもゾクッとするくらいに冷たい口ぶりで言い切った。「私に近寄ろうって男なんていやしないわよ」
「へえ……。どうしてっスか?」
 意外そうに大樹が言ってシャンパンのグラスを空けた。
「私みたいな仕事ばっかりやってる女を好きこのんで追いかけ回す男なんていないのよ」
 百合子は、これまでの人生で男と付き合ったことなどなかった。高校生の頃に少しだけあるクラスメートといい感じにはなったのだが、勉強もスポーツもバリバリこなす百合子に相手の男が恐れをなしてしまったのである。その後も、勝ち気な百合子に近寄りがたさを感じたのか、周りの男は常に百合子から距離を置いて接してきたし、百合子の方でもそんな男たちを相手にしようとはしなかった。大学でも、そして会社に入ってからもそんな状態が続いていたのだ。
「今までロクな男が周りにいなかったってことっスよ」大樹がカラリとそう言って、ウィスキーをオーダーする。「無理めな女を落としてこそ男ってもんでしょ」
 上司に向かって「無理めな女」ですって。言ってくれるじゃないの……。
 その時、後ろからそっと包み込むように抱きすくめられ、百合子は戸惑って凍りついた。
「でも安心しました。百合子さんに付き合ってる人がいたら……奪うのに苦労するところでした。それはそれで燃えますけどね」
「ちょ、ちょっと……」
 普段なら神速で張り飛ばしているところだが、どうしたわけか体が動かない。カウンターを見るとバーテンダーも気を利かせたつもりなのかいなくなっているし、元々他に客もいなかった。
「百合子さん……僕じゃダメですか?」
 耳元でそっと囁く言葉はプレイボーイ気取りだが、声音に明らかな緊張が浮かんでいる。セクハラはともかくこうした状況には慣れていないのだ。百合子の方も顔を真っ赤にして黙り込む。何しろ男に免疫はない。幸い、店内は控えめな間接照明のみだし、今の姿勢だと大樹からは百合子の顔は見えない。百合子は聞こえそうなくらいに高鳴る自分の鼓動を感じながらも声を落ち着けて言った。
「私を落とすつもり? いくら男に縁がないったって、いい加減な男に簡単に引っかかるほどバカじゃないわよ」
「い、いい加減だなんてそんな……」
 言い淀む大樹。
「ま、いい加減かどうかはともかく、今のあんたじゃまだまだね。もっと男を磨いてもらわないと。私はそんなに安くはないわよ」
 そう言いながらも百合子には何となくわかっていた。今は仕事ができる以外には取り立てて気の利いたところもない男で、軽薄そうな外見も相まってとてもモテるとは言い難い。だが、仕事で実績を積んでもっと自信をつければきっと大化けする。そのうちライバルも多くなってくるだろう。今のうちに捕まえておいた方がいいのかも知れない。
 それに……今のこの感じ、悪い気はしない。
「ま、まだまだっスか……」
「そう、まだまだね。でも……」
 そう言いながら百合子は振り返った。目の前に大樹の顔がある。百合子は唇で大樹の頬に軽く触れた。
「仮予約くらいならしといてあげるわよ」
 呆気に取られた表情の大樹に百合子がいたずらっぽくそう言った。
「ゆ、ゆ、百合子さん……」
 大樹がわなわなと震えながら呟く。
「これはもう愛の告白としか……」
 そう言ってタコのように唇を尖らせながら迫る大樹。
「だからもっと男を磨けって言ってんでしょうが!!」
 相変わらず血の海に沈む詰めの甘い大樹であった。



「そんな感じでハッパかけたらね、すっかりその気になっちゃって……。仕事もバリバリこなすし、自信がついてきたら女の子の扱いまで上手になっちゃってね。だんだんモテるようになってきたから、そろそろマズイかなって思ってきちんと付き合うことにして、それからしばらくして結婚したの。私が会社で目を光らせてた頃は浮気もしなかったけど、退職して会社にも私を知らないコが増えてきてね、今の有様ってわけよ。まあ、浮気を見つけた時はちょっとばかしキツイお仕置きをしてあげるから……」
 百合子はそう言って笑った。
「は、はあ……」
 おキヌはおキヌで今の話をどう活かせばいいか困っているようだ。
「まあ、男ってのは縛られるのが嫌いだから、あんまり浮気の心配ばかりしてるとうんざりして愛想尽かされることもあるわ。逆にヤキモチのひとつもないと、向こうは油断するか気味悪がってボロを出すもんよ。そん時にしっかり雷を落としてあげればいいのよ」
 百合子がそう言ってもまだ不安そうなおキヌ。
「でもおキヌちゃんなら大丈夫よ。正直、美神さんみたいなのが忠夫の恋人だったら浮気の心配もあるかも知れないけど、おキヌちゃんじゃね。心配で浮気もしてられないと思うわ」
「頼りないってことですか?」
「そうじゃなくて。浮気なんかしたらおキヌちゃんが深刻に悩みそうだってこと」
 それにこういうコの方が本気で怒ったら怖いしね、百合子は心の中だけでそっとつけ加えた。
「ほらほら、そんな顔してないで! おキヌちゃんこそ忠夫に愛想尽かさないでよろしく頼むわよ。あんたみたいないいコを泣かしたりしたら私だって許さないんだから、お仕置きする時は手伝うわよ!」
「はい!!」
 どうやら浮気をした時の制裁は大樹の比ではなくなりそうな忠夫であった。

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