極 楽 狂 騒 曲

文・kuromimi


(前文)


この作品は林原悠様の二次創作作品“極楽大奮戦”および“スク−ルウォ−ズ”の三次創作です。
今回の掲載にあたり、林原悠様のご助力を頂きましたことを感謝いたします。


(本編)


ここは横島除霊事務所。
美神除霊事務所から独立して1年近く。


穏やかな春の日々が続く、ある週末のこと。
横島は疲れていた。
最近、おキヌと冥子の間が険悪になっていってるように思えるからである。何度か2人に問いただしてみたが、そんなことはないと二人は口をそろえて返してくる。が、しかしである。三人で一緒の時はそれはもう表現しがたいオ−ラというか、威圧感みたいなものをひしひしと感じるのである。それはもう現実逃避したくなるぐらいに。
以前は結構気が合っていたのに……。
そんなことを考えながら、昨日の仕事の報告書を書いていた。夕方近い横島除霊事務所。
愛子は買い物、シロとタマモは散歩に出かけたまま、まだ帰ってきていない。


「横島さん、ただいま。今、ちょっといいですか?」
学校帰りのおキヌが事務所に入ってきた。
「おかえり、おキヌちゃん。で、なんだい?」 
横島が返事すると、おキヌが入り口から手招きをする。 
「もう少しでこれが終わるからちょっとまっててくれない?」 
横島が書類をヒラヒラさせながらそう言うと、おキヌがいいからいいからと、尚も手招きをする。
「う−ん、仕方ないなぁ」
そう言って席を立ち、入り口のほうへ向かう。すると、おキヌはチラッと奥の方を見やりながら耳元でひそひそと話し出す。
「おキヌちゃん、そんなことしなくても俺以外、誰もいないよ」 
そう聞くとおキヌはホッとため息を漏らし、普通に話し出した。


「え−と、実はですね。コレなんですけど」 
と言いながら一枚のチケットを差し出す。
「コレは?」 
「映画のチケットなんですけど、明日、一緒に行きませんか?」
横島がチケットを見ながら、“どうしたのこれ?” と聞く。
「実は、魔理さんから貰ったんです、“タイガ−はこんな物見ないから、横島さんと行ってきたら?”と言ってました。」
「ふ−ん、確かにこういう恋愛ものはあいつは苦手だよなぁ」
体の大きな親友のことを思い浮かべる横島。
「週末は、何も入って無いから良いよ」
少し考えてからそう答える横島に、おキヌは満面の笑顔で小さくガッツポ−ズ。
「ここしばらく仕事が忙しくてデ−ト出来てないから、久々に楽しもうか?」 
「はい、じゃあ楽しみにしてますよ」
「うん。俺もね」
「じゃ、私は夕飯の用意をしてますね」
おキヌはよほど嬉しいのか、鼻歌を歌いながらキッチンスペ−スに入っていった。


                    ◆    ◆    ◆


その頃、冥子は自宅の屋敷で理事長でもある母親に自室へ呼ばれて、ある指示を受けていた。
「〜お母様〜、何の用ですか?〜」
冥子が訪ねると。
「〜あなたもそろそろ私の後継者として、学校運営に携わっていってほしいの〜。〜そこで明日から、全国の学校関係者の研修交流会に1週間、出張に出てほしいのよ〜」
「え〜、何でわたしが〜。〜そんなことしたら、横島君に、会えないじゃないの〜」
首をブンブン横に振りながら嫌がっていた。
「〜確かに、1週間は長いわ〜。〜けれど、あなたが早く理事長として、いえ副理事として仕事が出来るようになったら、それだけ横島君と一緒にいる時間が増えることになると思うのよ〜」
母親が噛んで含めるように話す。そしてさらに続ける。
「〜そうなれば冥子、〜今あなたの受けている個人レッスンの時間も合わせてかなりの時間を横島君と共有出来るのよ〜?コレがどういう事かわかるでしょう〜?」
最後の方は、なにか一物あるような笑顔で話しを締めくくる。


母の話を反芻するように、ブツブツつぶやきながら考え込む冥子。そして考えが纏まったのか、母親の目を正面から見つめるとニコリとして口を開いた。
「〜わかりましたわ、お母様〜♪」
先ほどとはうってかわって、満面の笑みで返事した。そしてまた何事か考え込むようにブツブツつぶやき始めたかと思うと、“〜それじゃあ横島君に電話してこなくっちゃ〜”とか言いながら、部屋を飛び出していった。


                    ◆    ◆    ◆


場所は変わって、ふたたび横島事務所。
夕食の真っ最中であった。その席で横島が突然、ブルブルと正体不明の悪寒に襲われていた。
「な、なんだ今のは!?」
「どうかしたんですか、横島さん?」
おキヌが不思議そうに尋ねてくる。
「え?なんか急に寒気がしてさ」
「風邪でも引いたの、横島?」
今度はタマモが聞いてくる。
「そんなことは無いはずなんだが…。これといって思い当たる事もないし……」
少し考えてみるが、すぐにどうでも良くなったのか、徐に口を開く横島。
「みんなに明日の事で言っておきたい事がある」
全員の顔を見回しながら更に続ける。
「今月はこれまでに受けた依頼はすべて完了した。みんなが頑張ってくれたおかげだ。書類関係の方も夕方までに大体、完了している。そこで明日、明後日は休暇にしようと思う。それで、俺とおキヌちゃんは明日は一緒に出かけるから、もし何か有れば携帯電話に連絡してくれたらいい。それだけだ」
「2人でどこに出掛けるのかな?」
愛子が興味津々で聞いてくる。
「どこって、え−と……、デ−トかな?」
横島が少し照れながら答える。


「え〜、おキヌどのばかりずるいでござるよ〜、拙者も連れて行って欲しいでござる〜」」
「あんたはいつも横島に散歩に連れて行って貰ってるでしょうが!」横島に詰め寄ろうと席を立とうとするシロに、タマモが釘を刺す。
「そうね、あんまりおキヌちゃんの機嫌が悪くなると、また肉抜きされちゃうかも」 
と、いたずらっぽい目で愛子が追い込む。
「うっ、それだけはかんべんでござる」 
「はいはい、明日のデ−トを見逃してくれたら、そんなことしないわよ」シロは涙をうかべて、おキヌに泣きつくと、おキヌが笑顔でのたまう。
いつの間に、“こんな駆け引きをする子になったんだろうと”、横島は苦笑している。
そんなふうにじゃれあっていると、事務所の電話が鳴り響いた。


「はい、横島除霊事務所です。どちら様ですか?」 
横島が席を立ち、受話器を取る。
「〜もしもし、冥子だけど、横島君?〜」 
「冥子ちゃんか、どうしたのこんな時間に?」
「〜あのね、明日から1週間、出張なの〜。それでね、そのこと伝えておこうと、電話したの〜」
「そうなんですか、じゃあ来週の講義の打ち合わせどうしますか?」
「〜マ−君と相談してやってくれたらいいから〜」、
「わかりました」
「〜それでね、おみやげは、どんなのがいいかしら〜」、
「そ、そんなものいいですから、無事に帰ってきてくださいね」
横島があわてて答えると、聞き耳を立てていたおキヌの耳がピクピクして、笑顔は変わらないが、目だけが笑っていない。それを見たシロとタマモは、頷き合うと即座に手にしていたお皿を持ってビュンと音がするくらい壁際に張り付き、様子を窺う。愛子はお皿ごと机の中に隠れてしまった。


どうやら、日常茶飯事らしい…。


そんなことになっていると気づきもしていない横島は、笑顔で電話を切ると振り返って口を開く。
「あのさ、冥子ちゃんが明日からいないって……」
……固まった。そして冷や汗をたらりとひとつ流しながら、おそるおそる尋ねた。
「ど、どうしたのおキヌちゃん?」
「何でもありませんよ。それより、冥子さんがいないっていうのは?」
と笑顔のままのおキヌ。笑っていない目で横島を見返す。


《 まったく!!横島さんたら、そんな優しいこと言ったりするから冥子さんがつきまとうのよ。それはそうと、あんなに毎日邪魔ばかりしていたのに一週間も居なくなるなんて、また何か企んでいるのかしら?これは油断できないわね……… 》


内心こんな事を思っていたりする。
横島は単に出張先での暴走を心配しただけなのだが……。


「えっと、なんでも研修会だとか何とかで1週間、出張で留守にするって言ってたよ」
それを聞いたとたん、今度は天使のような笑顔でいっぱいのおキヌ。
「そうですか、理事も大変なんですね♪」


心の中で何度もガッツポ−ズを出しながらであるが。


《・・・やった〜、明日のデ−トも来週も邪魔されずに横島さんと過ごせるわ〜・・・》
心ここにあらずといった表情で別の世界に行きそうになっているおキヌに、横島はひきつりながら声をかける。
「じ、じゃあ、そろそろ遅いから急いで食べて帰る用意をしようか」
「はい、じゃ、私はキッチンをかたづけますね♪」
と、鼻歌まじりでかたづけだす。
「おまえらもさっさと食べてしまえよ」
壁際のシロ、タマモと机から出てきた愛子に声を掛け、自分も食べ始める。まだ少し固まりながらではあるが、4人は急いで食べ始めた。


                    ◆    ◆    ◆


明けて土曜日の朝。
いつものように横島が目を覚ますと、おキヌはすでに起きているのか、隣の布団は畳まれている。
「あ、おきました?、おはようございます。」
おキヌがキッチンから声をかけてきた。
「おはよう、おキヌちゃん。やけに早起きだね、昨日は遅くまで、おきてたみたいだけど?」
「はい、なんか今日のデ−トが楽しみで、嬉しくて早起きしてしまいました」
恥ずかしそうに答えるおキヌ。
「じゃ、ご飯たべて支度できたら、出掛けようか?」 
「はい、そのつもりで、ご飯の支度出来てますよ? 」
「じゃ、俺は先に顔あらってくるわ」 
横島が布団から抜け出し、洗面所のほうへ向かう。


以前のぼろアパ−トではない、仕事が軌道に乗りだして収入も安定し出すと、横島は即座に引っ越しをした。何より、公然としてはいないがおキヌと同棲状態である。ひと部屋しかない状態だと何かと気を使いすぎるので、個室を持てる程度のマンションに移ったのであった。しかし、結局1週間もしないうちに、おキヌに押し切られて広い方の一部屋で布団を並べて寝ることになってしまったのだった。


朝食も済み、着替えた2人が部屋を出て、都心の映画館に向かう為、駅に歩いていく。楽しそうに話しながら歩く二人を、すれ違う人々がうらやましそうに振り返りながら通りすぎていく。
おキヌにしてみれば、仕事以外で横島と二人っきりで外出するのは久々のことであり、楽しくて仕方なかった。


「おキヌちゃん、今日の映画2時からだよね?。それまでどこに行きたい?」
 横島としては、今日は、おキヌの好きなようにさせるつもりであった。
「え−と、まず最初は洋服と靴を見に行って、それから宝石店に行って、カフェで軽くお食事かな?」
指折り数えながら行き先を挙げる。。
「で、映画見て、それから夜景の見えるレストランでお食事して、ソノアト…ゴニョゴニョ…
もじもじしながら最後の方は囁く様に話すおキヌ。
「え?そんなにたくさん行けるかな?。それに最後の方、良く聞き取れなかったんだけど?」
 いたずらっぽい笑顔でつっこみを入れる横島。
「………」
顔を真っ赤ににしておキヌは俯いてしまった。
「ははは…、じゃあ、とりあえず洋服ってことで行こうか?」
俯いてしまったおキヌの手を握り、歩き出す横島。おキヌは恥ずかしそうに“はい”と答えた。


                    ◆    ◆    ◆


「これ、どうですか?」
「う−ん、こっちの赤いほうが似合うと思うんだけどなぁ」
「それじゃあ、こっちは?」
ファッションショ−さながらに両腕一杯のスカ−トやらシャツやらを物色中であった。
「じゃあ、とりあえずコレとコレと、あと、その3枚を試着してみるんで、着替えたら呼びますね」
おキヌがそう言いながら、フィッティング・ル−ムに向かう。
「ふう、やっと決まりそうだな。それにしても女の子の買い物パワ−って、あなどれないなあ。ひょっとしたら、除霊中より集中してるかも?」
横島が、彼女づれでショッピングに来た世の男性陣の一般的な感想みたいな物をつぶやいていると、“横島さ−ん、見てくださ−い”と、カ−テンの隙間から顔を出しながらおキヌが呼んでくる。
「はいはい、今行くよ」
返事しながら横島は足早におキヌの方へ向かっていった。


「うふふふふ」
「嬉しそうだね?」
 横島が見たまんまの感想を述べると、おキヌは更に嬉しそうに返す。
「だって、久しぶりに、いっぱい買いましたもん♪」
「そっか、そりゃ良かった」
と、こちらも嬉しそうに答える。
「それはそうと、さっきのスカ−ト、ちょっと短すぎないか?」
横島は気になってたことを聞いてみた。購入した中にかなりきわどいのが混じっているからである。自分が見るのは良いが、他の男の視線にさらされるのは気に入らないらしい。
「え?、横島さん、気に入らなかったですか?。横島さん、こういうの好きそうだから買ったのに」
おキヌが頬を少しふくらまして答える。
「あ、そりゃあ嫌いじゃないと言うか、え−っとフトモモは好きっていうか……」
横島が煩悩丸出しの返答をしていると、おキヌがさらに言いつのる。
「だって、横島さんて、しょっちゅう女の子に声掛けるし、今はそうじゃないですけど、私と一緒にいるときでも綺麗な女性を見かけると、チラチラ見てますもん」。
おキヌがさらに頬をふくらませて、井げたなんかも貼り付けながら、詰め寄る。
「え……、あれはその、なんちゅうか男の本能ていうか、悲しい性っていうか……」
横島が冷や汗を掻きながら、後退りをする。


「横島さん!!」
おキヌが目をキッとつり上げて、さらに一歩、横島に詰め寄る。
「ハイ!」
汗をかきながら思わず気をつけの体勢になる横島。
「ハア…、…ふふふふ……」
ため息を一つついたかと思うと、おキヌは忍び笑いをし出す。
「おキヌちゃん??」
いきなり笑い出したおキヌを見て、狐につままれたようになる横島。
おキヌは小さくため息をもう一つつくと、話し始めた。


「横島さん、本当に私のこと好きなんですよね?」
「もちろ…」
「横島さんが私のこと好きだって言ってくれたこと、本当に嬉しかったんです。幽霊の頃から、ずっと一緒にいて、そしてお互いの気持ちも確かめ合って、一緒に住んでて……」
話しながら、だんだん顔を真っ赤にしていくおキヌ。
「と、とにかく私、ず−っと横島さんについて行きますからね?、わかりました?」
強引に話をまとめると、横島にキスをするかのように顔を近づけて返事を促した。
「わ、わかった。そして、ありがとう」 
やや、顔を赤くしながら横島は答えた。
「うん、よろしい」 
人差し指を立てて左右に振りながらおキヌは満足そうに頷いた。そして、その拍子に腕時計が目に入るなり、“いっけなぁい!映画始まっちゃう”と、あわてて走り出す。いきなり走り出したおキヌをいさめながらも後を追う横島。
おキヌが路地を出て曲がろうと飛び出した瞬間、“きゃ”と、悲鳴を上げたかと思うと、真横に吹っ飛んでいく。
「おキヌちゃん!!」
横島があわてて声を掛けつつ、路地から顔を出したその前を何か大きな物が塞ぐ。
「なっ!!」
あわてて見上げる横島。横島の背丈の倍ほどあろうか、大きな悪霊であった。横島の方に向きながら、威嚇するように唸っている。


「な、なんだ、コイツは?」
驚きながらも即座に霊波刀を構え、間合いを取る横島。その時、おキヌのうめき声が耳に入った。
「おキヌちゃん、大丈夫か?」
横島が悪霊から目をはずさずに問う。
「大丈夫です、いきなり体当たりされたみたい。けど、少し打ったくらいです」
顔をしかめながら答えるおキヌ。とりあえずホッと内心胸をなで下ろす。
「しかし、コイツはいったいなんなんだ?」
「さあ?、私にもサッパリ」
なにしろ、いきなり現れたのだから解るわけがないのは、当たり前であった。
「とにかく、コイツは俺が足止めするから、おキヌちゃんはコレとお札で周囲に結界を張るのと、それから、念のためにコイツに被害を受けた人がいないかどうか確認してくれ」
仕事の時の顔になった横島が、文珠を、おキヌの方へ投げつつ指示を出す。そして、素早く周囲を視認する。


このあたりはさすがにプロのGSである。ひとたび心霊現象に出会えば、それが霊的災害に及ぶものだと判断すれば、被害を最小限に食い止めることと身を守ることなど、パ−トナ−に的確に指示を出す。なにしろ、美神のところにいた頃とは違い、今は事務所で請ける除霊はすべて横島が責任を負わなければならないのである。横島が的確に状況判断を下し、なおかつ的確に指示を出す、そうしないと仕事はもちろん、自分たちの命すら左右しかねないのである。


文珠の結界で身を守りながら周囲を探索するおキヌ。被害者を見つけると、悪霊に注意しながら被害者を中心にお札で結界を張り、被害者の容態を確認する。その間、横島は悪霊から目を離さない。
「横島さん!」
「どうだ?おキヌちゃん?」
「とりあえず2人ほどケガ人が。1人は擦り傷程度だけど、もう一人は悪霊にやられた時に霊力を吸い取られて、放置すると危険な状態になるかも。それと見物人が多いですね」
おキヌが状況報告をする。
「すぐに救急車の手配を、それと、ICPOの西条に連絡を取って、付近の封鎖をして貰ってくれ」
横島がさらに指示を出す。
横島の方を見やりながら、おキヌが携帯電話を取り出し、話し始めた。


悪霊が横島にむかってさらに威嚇するようにうなり声を上げた。次の瞬間、横島の胴程ある腕を真上から袈裟切りのように振り下ろしてくる。 横島が軽く舌打ちして悪霊の腕をかいくぐるようにかわして、懐に潜り込む。そして、振り下ろされた腕を下から霊波刀で切り上げる。
悪霊が悲鳴らしきものを上げる、切り取られた腕がそのまま霧散する。
「どうだっ!」
 鼻息も荒く成果を確認しようと間合いを取り直し、霊波刀を構える横島。と、その瞳が驚愕に見開かれる。悪霊は切られた瞬間から固まったように動きは止まっているが、切り取ったはずの腕が再生して行くではないか。じわじわとであるが、切り取られた上腕付近から再生していく。


「じゃ、コレならどうだ」
 悪霊が動かないと見るや、剣道の突きのように霊波刀をお腹のあたり目がけて突き刺す。そしてそのまま霊波の圧力によって消滅させようと霊波刀の、出力を上げる。すると、悪霊が苦しそうに身をよじり始めた。 さらに出力を上げようと集中した瞬間、悪霊は真横から腕を振り抜き、横島をはじき飛ばした。
「うわ−!?」 
そのまま3mほど飛ばされて、通りに面したビルの壁に背中から叩き付けられた。
「ゲホッ」 
咳き込み苦悶する横島。 
「横島さん!!」
 それまで事の成り行きを呆然と見ていることしか出来なかったおキヌであるが、横島が壁に叩き付けられたのを見て我に返り、駆けつけようとする。
「来るな!、コイツはいつものように簡単にはいかせてくれないみたいだ」
横島がおキヌをとどまらせながら、立ち上がる。
「くそっ、文珠はあと2つ。それより西条のヤロ−はなにしてやがる!」
悪態をつく横島。


いつもの除霊ならば事前に情報をつかむことが出来る上、除霊現場付近を封鎖することが出来る。強力な文珠、例えば“爆”などを躊躇無く使用することが出来るが、今回の場合怪我人が近くにいる上、先ほどから野次馬の姿も見えたりしているのだ。それに加えて文珠の手持ちが今回は少ない。ましてや、霊波刀で切ったり、突いたりしてもダメ−ジが確認できないところに加えて、再生する相手に、“浄”の文珠が効くとも思えない。ネクロマンサ−の笛も同様であろう。だから一刻も早く、怪我人や野次馬を避難させて付近が封鎖されるのを心待ちにしているのである。


どうやって仕留めようか思案しながらも、悪霊とにらみ合う。すると突然“女ぁ〜”とハッキリ聞き取れる声を上げながら、悪霊がくるりと背を向け、対峙していたその場からすこし後方の路地に向かい突進していく。
「女???」
突然の悪霊のセリフと動きに疑問符をたくさん浮かべながらあっけに取られる横島、そして一足遅れて後を追う。もう少しで後ろから斬りつけられる距離に迫ったとき、悪霊の向かったその路地から、二人連れの女の子が姿を現す。何か話にでも気を取られているのか、悪霊に気が付いていない。
「危ない!」
そう横島が叫んで、相手もこちらに気づく。いきなり視界に入った悪霊の姿に声もなく立ちすくむ女の子達。
「ちっ!」 
舌打ちをしつつ、女の子と悪霊の間に割り込もうと、さらに加速する横島。しかし、“間に合わない!!”そう思った時だった。
今まさに悪霊が女の子達に襲いかかろうと両腕を広げた瞬間、まずサイキックソ−サ−が悪霊の後頭部に直撃、そしてほぼ同時に、その広げた両腕がまるで断ち切られたように離れ、腕の先が霧散していった。それを見て取った横島は素早く文珠に“縛”の文字を念じ込み、自らの身体を盾にするように悪霊と女の子の間に立ちはだかり、文珠を発動させた。そしてまず、サイキックソ−サ−を投げつけたであろう人物を見やる。おキヌであった。彼女は少し頬を紅潮させ安堵の息をもらしている。
「ありがとう、おキヌちゃん」
横島はそう声を掛けた。実際、彼女がサイキックソ−サ−を実戦に使うのを初めて見たのであった。どうやら彼女なりに実戦に使えるように訓練を積んでいたようである。さらに2人目の方に目を向ける、悪霊を切ったであろう西洋風の細身の剣を片手に、横島のほうを見てサムズアップのサインをしている男が居た。その男にも声を掛ける。
「遅せェじゃねえか、西条」 
そう、ICPOの西条であった。


「やあ、横島君。遅れてすまなかったね」西条が平静に挨拶を投げ掛けてくる。
「“やあ”じゃねえよ。何でこんなに遅いんだ?」横島が睨みながら問う。
「別件の最中だったもので。それより話なんか後にしてソイツを先にしとめた方が良いんじゃないのか?、一応、封鎖は大体完了したはずだ、野次馬も避難させている。君の後ろの女の子を除いてだが」 
西条が悪霊の方を見やりながら、問い返す。
「そ、そうだった」 
横島が思い出したように首だけ振り返ると、女の子達が横島の背中に隠れるようして震えている。
「君たち、とりあえず安全になったから、少し離れててくれないか」
と、横島がより自分にしがみついている方の女の子の肩をつかんで揺さぶる。 
「ハ、ハイ」
肩をつかまれて、ようやく気づいたのか、その子が青ざめた顔を上げながら返事をする。その顔を見たとたん、横島は混乱した。


「お、おキヌちゃん??」
なんと目の前の女の子がおキヌにうりふたつであった。
「「え?」」
目の前の女の子とおキヌがユニゾンで返事する。
返事をしたおキヌと、おキヌにうりふたつの女の子が口を開けたまま顔を見合わしている。
横島も口をパクパクさせたまま立ち尽くす。


彼らがそんなやりとりをしている横では、悪霊は“縛”の効果が切れかけているのか身じろぎを始めていた。両腕も再生しつつあった。
「横島君!」
西条が、いち早くそれに気づき、横島を現実世界に引き戻そうと大声で叱咤する。
「いっけね」 
横島がその声を聞き、あわてて霊波刀を構える。そして、おキヌに呼びかける。
「おキヌちゃん、とりあえずその2人をつれて、避難してくれ」
「は、はい」
まだ驚きから立ち直れないものの、あわてて2人の手をつかみ、その場から離れる。そしてお札を使って結界を張る。
「横島さん、こちらはOKです」
おキヌの報告を聞き取った横島は、西条に素早く作戦を伝える。
「見ての通り、あいつは切ったくらいじゃどうにもならない。どうやって霊力を回復しているのか解らないが、霊力中枢を狙えば問題ないはずだ。だから、そこを霊波刀で狙う。そしてそのまま霊力をさらに送り込んでやれば、そのまま全身が吹き飛ぶはずだ。」
横島の作戦に無言で頷く西条。
「そこでだ、西条、けん制をしてくれないか? もう一度両腕をばっさりやってくれれば、その懐に飛び込んで一撃入れるからさ」


西条が愛剣“ジャスティス”を抜いて構える。それを見て取った横島は西条に合図を送る。
「1,2の3」
文珠の拘束がとけて、動き出した悪霊の右腕の肘から先を神速の早さで切り飛ばす。それと同時に横島が陽動のためのサイキックソ−サ−を悪霊の顔を目がけて放つ。悪霊がひるんだ隙にさらに、西条が左腕を断ち切る。両腕を切られた悪霊が苦悶の唸り声を上げる。そして横島が打ち合わせ通り、がら空きの懐に飛び込み、霊波刀を最大出力にして霊力中枢を突き刺す。悪霊がひときわ大きな悲鳴を上げた。すかさず文珠の“増”で霊波刀にこめる霊力をさらに強化する。横島から送り込まれる霊力が悪霊の霊体維持の限界を超えたのか、そのまま四方に飛び散って霧散していった。


「ふうう、やっと終わった」
横島が大きく息を吐いてその場に座り込む。
「横島さん、お疲れ様でした。西条さんも。」
おキヌがねぎらいの声を掛けてくる。
「それにしても横島君、また腕を上げたね?それからおキヌちゃんも。いつの間にサイキックソ−サ−なんか使えるようになったんだい?」
西条は横島の除霊の腕前を素直に褒めて、おキヌがサイキックソ−サ−を使えることに単純に驚いていた。
「横島さんに学校の授業で教えて貰ったんです」 
「ということは公私共に横島君のパ−トナ−の座を独占状態というわけだ。こりゃあ、いよいよゴ−ルインも間近かな?」
西条はからかい半分で返してくる。
おキヌは嬉しさと恥ずかしさで顔を真っ赤にして俯いてしまった。横島も苦笑しつつ、まんざらでもないのか頬をポリポリ掻いている。
おキヌが喜びそうなセリフをポンポンと放ってくるあたり、かなり余裕の西条である。実際、横島が独立して以来、以前のような事あるごとに罵倒しあうような関係では無くなっている。横島の実力を評価していることを公言すらするようになっていた。


「あのぉ」
3人がほのぼの会話をかわしていると、先ほどのおキヌとうりふたつの女の子が声を掛けてきた。
「きゃ」
おキヌがあわてて振り向く。横島と西条もそれに続く。
「いえ。助けて頂いてありがとうございました」
女の子がお礼を述べる。そして、続けて問いかけてくる。
「あの、もしかしてなんですけど、おキヌちゃんとそれから……、 横島さんですよね?」
「うん、君はユリ子ちゃんだったよね?俺は初めましてだけど、あの時のことは一応、後からおキヌちゃんに聞いてるよ」(注・ 椎名高志 著 極楽大作戦 16巻 “死神なんか怖くない!!”参照)
横島が思い出しながら、半ば確信しているように問い返す。
「はい♪」
横島達が覚えていてくれたことが嬉しいのか、にこやかに返事を返してきた。


「なにか、つもる話があるみたいだし、とりあえず僕はこの辺で一旦、失礼するよ。それから横島君達にこの件の事情聴取がしたいから、一時間程時間をくれないか? 先に事後処理をしてからになるけど。終わったら連絡を入れるよ、この近くに居るんだろう?」
西条が横島達に了解を求める。
「解った。でも今日は休暇で来てるからそんなに時間はやれないぞ?それに昼飯もまだだし」
「解ってるって。その代わり僕がおごるから昼食を兼ねてということで、かまわないだろ?」
そうまで言われては、さすがに断れない、横島は一言“了解”と、言った。
「じゃ、また後で」 
西条はそう言うと、くるりと背を向け歩いていった。
そんな西条を見送ると、横島は再びユリ子の方へと向き直った。
「とりあえず、こんなところで立ち話というのもなんだし、どこか入ろうか?」 
「そうですね、じゃあ、あそこに入りましょうか」 
おキヌが周りを見渡して、最初に目に入ったオ−プンカフェを指す。
「ユリ子ちゃんもそれで良いかな?」
頷くユリ子を見て取ると、先に立って歩き出す横島。
「ああ、待って!」
2人もそれに続く。


                     ◆    ◆    ◆


「それにしても久しぶりってゆうか、こんなところでまた会えるとは思ってなかったよ」
「本当に久しぶり、あの後元気にしてました?」
横島とおキヌが懐かしそうにユリ子を見ながら聞いてくる。
「はい、私も会えるとは思ってませんでした。それにあの時、目が覚めてから先生にすべて聞いたんです。本当は寿命が尽き掛けていた私を、おキヌちゃんと美神さんという方が死神と闘って、私が長生きできるように尽力してくださったって。あの時、お礼が言えないままだったので、それがずっと気に掛かってたんです。あの時のこともあわせて本当にありがとうございました」
ユリ子が深々と頭を下げる。
「そんなかしこまらなくても、いいよ」
横島があわてて手を振る。
「でも……」 
と、ユリ子は納得しない。
「それに、どっちかというとお礼はおキヌちゃんに言ってあげてよ。あの時、誰よりも君の事がかわいそうだって。自分の分まで長生きして欲しいって、俺たちというか美神さんを説得したのはおキヌちゃんなんだし、俺はベッドで寝てただけだし」 
横島があの時の事情をかいつまんで話す。
「そんなことありませんよ。なんだかんだ言っても、横島さんも美神さんも自分のことのように喜んでたじゃないですか」 
自分のことを持ち上げられるのが照れくさいのか、おキヌが言い添える。
「そうだったんですか、でもとにかく本当にありがとうございま……??」 
ユリ子が重ねてお礼を言いかけたまま、首をかしげて考え込んでしまった。
「どうしたの?」 
「何か変なこと言ったかしら?」 
横島とおキヌが顔を見合わす。
「えっと、確かあの時のおキヌちゃんて幽霊だったような………?。生きてるように見えるんですけど?」
“今初めて気が付いたっ”て感じで、まじまじとおキヌの顔を見ながら言葉を続けるユリ子。困惑するユリ子を見て横島は気が付く。“そりゃあ、そうだよな”と独り言のようにつぶやくと、なにやらおかしかったのか笑い出す。一人笑い出した横島を見て、おキヌ達は訳がわからなくなる。
「横島さん、一人で笑ってないで教えてください」
おキヌが文句を言う。
「悪い、悪い。だって、普通、幽霊が人間に生き返ったって話聞かないだろう?逆は多いけど。そりゃあ俺や美神さんは勿論、西条達にとっておキヌちゃんが生きているってのは、毎日寝ることと変わらない日常的な事なんだ。でも周りの一般の人達にとっては、幽霊と出会う事すら稀な事なんだ。ましてや最初に会ったときは幽霊で、次に会ったら生身の人間だなんて。よくよく考えてみると結構俺達って貴重な体験してるんだなって思ったら、なんか可笑しくなっちゃって」
そう話し終えてもまだ可笑しそうに、うっすらと笑っている横島。
「そっかあ、言われてみればそうですね。私も生身で生きていることが当たり前で幽霊だったときの感覚なんて、最近ではあまり感じなくなったかな。でもその事が他の人にとっては充分異常なことなんですね…」
感慨深げに考え込むおキヌ。
「ふ−ん、本当に生き返ったのよね?ね、ね、その時の事教えて?」
ユリ子はおキヌの身の上に起こったことに俄然興味が沸いたのか、身を乗り出しておキヌににじり寄る。最早、緊張も解けたのか、気安く話し出す。
「えっと、……」
どこから話したらよい物か言葉に詰まるおキヌであった。


その時、唐突に横島の携帯が鳴り出す。着信表示を見ると、西条からであった。ちなみに着信音は月光仮面のOPだったりする。
「もしもし、西条か?ああ。 ああ、そうだな。それじゃ15分後って事で」 
そう言い終えると横島は電話を切った。
「西条さん、なんて?」 
「後始末が終わったんで、これからどうか?って。前にこの近くで美神さんと食事して良かったところがあるって、個室もあるから事情聴取にも最適らしい」
おキヌの方を見て説明する横島。
「私は別にかまわないですけど。映画も始まっちゃってますし…」
時計を見ながら残念そうに答えるおキヌ。
「あ、でもユリ子ちゃんはどうします?」
「わ、私は別に……、それに友達も帰っちゃったし……」 
あわてて手を振り、そして少し考え込みながら答えるユリ子。やがて意を決したように顔を上げる。
「あ、あの。もし許されるんなら、私も一緒に行ったら駄目かしら? え−っと。除霊に興味があるってゆうか、自分があんな体験しちゃったし。それに悪霊に向かっていく横島さんを見て、格好いいなって思っちゃたりして」 
少し顔を赤らめながら話すユリ子であった。
おキヌは自分のことから話がそれたので少しホッとしている。しかし、ユリ子のセリフの最後にひっかかり横島の方をチラリと見る。


「え?そう?はは、ありがと。まあ、俺たちGSとICPOの事なんかをむやみにに公言しないって約束出来るんなら、別にかまわないと思うけど?それに西条も可愛い女の子が来るのには、反対しないと思うし。ね?おキヌちゃん」


少し照れくさいのと、あとが怖いので頭を掻きながらおキヌに同意を求めようと視線を移し、そして凍り付いた。


 《 何よ!、デレデレしちゃって。横島さんたら!せっかく私とデ−トに来てるのにぃ。それに、私が褒めたりしても普通の反応しか返さないくせに、それに、それに!私と同じ顔なのに、なんか失礼しちゃうわ!! さっき“ず−っとついて行きます”って言ったら、わかったって言ったくせに! それに、ユリ子ちゃんもユリ子ちゃんよ。私と横島さんがデ−ト中だって気付かないのかしら? 》


などと、おキヌはユリ子のひとことから焼き餅モ−ドに入っていた。しかも少し焦げていた。


煙を上げかけている(意訳)おキヌを見て本能的にヤバイ予感がした横島は小声でおそるおそる、おキヌに話しかける。
「お、おキヌちゃん、そんなに怒らないで! きっとユリ子ちゃんもミ−ハ−的な意味で言ったんだよ」
“さあどうだか?”と言わんばかりの目つきで横島を見るおキヌ。無言のままである。
さらに“ヤバイ”と感じた横島は“俺は悪いことはしてないよな”と思いつつも、とりあえず下手に出ておく事にした。
「とりあえずゴメン、俺が悪かった!なんでも言うこと聞くからさ。お願いだから機嫌なおして」
拝みそうな勢いであった。仕事中とはえらい違いである。
「ホントですか?」 
少し目を細めて問い返すおキヌ。
「ウン、間違いない。ホントにホント」
かなり必死である。
「じゃあ、約束しましたからね。もし…、約束破ったら…ふふふふふふ………」
ニコリとすると、なにやら企んでいそうな笑いをするおキヌ。横島は心の中で涙を流していた。


《・・・どこで間違ったんだぁぁ。俺は死ぬかもしれない。ルシオラ、おまえには会えないかもしれない、すまない。・・・》


現実逃避しかけている横島であった。 


合掌。


そんな2人を不思議そうに見ているユリ子であったが、2人が話を終えるのを見て、
「じゃあ、纏まったみたいなんで行きましょうか?」 
と言って席を立つ。そして横島の隣に立つと、横島の腕をつかんで引っ張り上げ腕を組む。
「え?」 
腕を捕まれて現実世界に帰還した横島はあわてて離れようとするが、見た目以上に力持ちなのか腕が離れない。情けなさそうにおキヌを見るが、おキヌは“知りません!”とばかりにそっぽを向く。仕方なくユリ子に引っ張られてトボトボ歩く横島。そんな横島達の後ろ姿を見て静かな嫉妬の炎を上げるおキヌ。やおら横島の後ろに早足で近づくと、殺気を込めて横島のおしりをつねり上げる。
「っ……」
横島は声も上げられずに苦悶する。そんな横島を見て “べ〜” と舌を出して足早に先を歩いてゆくおキヌであった。
“おキヌちゃん、何を怒ってるんだろう?” と、解らないって顔をするユリ子。“君は気楽で良いなぁ”てな顔でユリ子を見る横島。そしてため息を一つついて歩き出す。隣を歩くユリ子は楽しそうであった。


                     ◆    ◆    ◆


「で、彼女を改めて紹介してもらえるかい?」
約束のレストランで落ち合った横島達が席に案内され、注文も終えた西条がユリ子の方を見やりながら横島達に話しかける。
横島はおキヌの方をチラリと見ながら西条の問いかけに答えようとする。おキヌはまだむくれたままであった。
「この娘はユリ子ちゃんといって、まだおキヌちゃんが幽霊の時に知り合ったんだ。え−と、実は…………………かくかくしかしかって訳なんだ」
「へ−、そんなことが有ったのか。それにしてもおキヌちゃんとうりふたつだね。何か関係が有るのかい?」
「いや、おキヌちゃんは未婚のまま例の事件にに巻き込まれたんだし、やっぱり偶然だと思うけど」
ユリ子は自分が話の中心になっているので、少し照れて顔が赤い。しかし興味津々で2人の会話に耳を傾けている。
「解った、その話は良いとして、彼女がここに居る訳は?」
西条が当然の疑問を投げ掛けてくる。
「ああ、なんでも自分が死ぬ運命だったのを変わることが出来た所為かオカルトに興味があるらしい、それに全くの他人じゃなかったし。それから一応、俺達の事やICPOの事なんかは公言しないって、約束もしてくれたし。それに女好きのおまえならイヤとは言わんだろ?」
横島が少しいたずらっぽい目で毒を吐く。
「さすがに君には叶わないけどね。まあ、解った。そういう事なら、良いだろう」
慣れているのか、さらりと毒を吐き返して了解する西条であった。


「それはそうと、おキヌちゃんがなにやら機嫌が悪いみたいだけど?また君が何かやらかしたのかい?」
さっきから会話に参加せず横島のほうをにらみつけているおキヌをチラっと見て、小声で横島に問いかける。
「い、いや、俺は何もしていないぞ。い、いつもの焼き餅だ」
横島がおキヌと視線を合わせずに少しあわてながら小声で答える。


「誰が何を焼いてるんですか!」
おキヌが聞こえるはずのないひそひそ話を聞きとがめて、僅かに殺気を漏らしながら割り込んでくる。
「「イ、イヤ、ナンデモナイデス」」
横島と西条がユニゾンであわてて否定をした。


どうやら西条も知っているらしい、おキヌがこういう感じの時は逆らわない方が良いということを。


「じゃ、さ、早速でなんだけども事件の話に移ろうか?お、おキヌちゃんも良いかい?」
西条が強引に話をそらしにかかる。横島のほうを睨みながら。
「ハア、とりあえず良いですよ」
おキヌもようやく怒りが収まってきたのか、溜息をひとつついて同意したのであった。


程なく、注文した品も来たので“それじゃあ食べながら話そうか”ということになった。


「……それで、こちらも目撃者や巻き込まれた人間に悪霊が現れた経緯や、ヤツがどういう行動をしたのか聞いてみたんだが。有るひとつの推測が成り立った。その推測というのは、ヤツが女好きというか、女性に変質的な妄執を持った悪霊だということだ」


「「「はあ?」」」


訳がわからない様子の3人であった。


「つまりだね、ヤツはおそらく生前に女性と縁が無かったのだろうね。死後もそれが無念となって成仏できずにこういう女性の多い所へ出現して、女性を襲ったとしか考えられないということだ」
腕を組みながら西条がさらに続ける。
「そしておそらく、あの斬られても再生するという能力は、こういった人の多い所にありがちな負の念を吸収しているんだろう。被害者も女性が多かったし、数少ない男性の被害者も女性連れだったし」
西条がひとりでウンウン頷きながら話をしめくくる。


「へ−、悪霊ってそんなに簡単に生まれる物なんですか?」
ユリ子が感心したように問いかける。
「苔の一念っていうだろう?それぐらいに人間の感情というのは、すごい力があるんだよ。現に俺達GSも、本来人間の中に有る霊力というものを武器や盾にして闘うのだけれど、その霊力をコントロ−ルするのも感情であり、精神力なんだよ」
横島が霊波刀を出しながらする説明に納得出来るのか、興奮気味に頷くユリ子。
「じゃあ、もしかして私もGSになれたりするのかな?」
「そう簡単にはいかないけどね。それにGSになろうとするとある一定の霊力が必要になるし、難関の試験だって通らなきゃいけないし。そのうえ、いつも命がけだし。まあ運と実力があって、それからどんな状況になっても生き延びる精神力が無いとかなりむずかしいだろうな」
 横島が感慨にふけりながら実感の籠もった言葉を吐き出す。
「じゃ、私には無理かも。霊力が有るだけではどうにもならないんですよね?」
ユリ子が神妙な顔でさらに問いかける。
「さっきも横島君が言ったけども、まず大前提は一定の霊力が有るかどうかだよ。もしかしてユリ子ちゃんは結構、霊力があったりするのかい?」
ユリ子の様子が変わった事に興味をそそられたのか、西条が助け船を出す。
「さあ?計ったことはないけど、結構、霊感は有る方なんですよ。良く町なかで幽霊見ちゃうし。なんか自然にピントが合うってゆうか、別に見ようとしてはいないんですけどね」
「へ−、そうなんだ。私も生き返ったときは勝手に見えちゃってよく困ってたわ。ま、そのおかげで横島さん達と再会できたんだけどね」
おキヌも自分のことを思い出したのか、少し懐かしむような目で会話に参加してくる。


「まあ、別に気を落とすことは無いよ。無かったら無いで他に職業はいくらでもあるんだし。それにどうしても自分の霊力が気になるのだったら、僕を尋ねてICPOのオフィスに来るといい。一応、測定用の装置も有るし事情を受付で話せば係の職員が対応してくれるはずだよ」
西条が深刻そうなユリ子を見て、少しあわれになったのか優しく声を掛ける。そして深刻な雰囲気を嫌ったのかとんでもないことを言い出す。
「それにしても、今度の件は横島君にとっても人ごとじゃ無いと思うのだけど?」
西条が何が可笑しいのか、笑いながら言う。
「どういう事だ西条?」
「だって、かっての横島君はどつかれてもはたかれても、挙げ句の果てには誰かさんに殺されそうになっても、女性に会ったら飛びかかっていたじゃあないか?」
西条が耐えきれなくなったのか、ついに吹き出してしまう。
「そ、そんな人聞きの悪い事を。ね、ねえおキヌちゃん?」
「あら、わたしもその様に記憶してますけど?」
「そ、そんなあ、おキヌちゃんまで。だってあれはおれの霊力の源だったし、俺、もてなかったし。仕方なかったんやぁ!」
と、いじけてテ−ブルの隅にのの字を書き出す横島であった。
「え? 横島さんってそういう人だったんですか?」
ユリ子が目を丸くしてたたみかけてくる。彼女に悪意は無いが。


「まあまあ、今はおキヌちゃんて彼女も居ることだし。あんな悪霊になることは、たぶん無いんじゃないか。なあ、おキヌちゃん?」
「そうですね♪。そんな事にならない様するのが私に課せられた運命かも」
やりすぎたと思ったのか、西条がフォロ−してくる。そんな西条におキヌがクスクス笑いながら同意する。
「おキヌちゃんと横島さんて恋人同士だったの!?」
「う、うん」
おキヌが頬を染めながら肯定する
「そっかあ、それは残念。せっかく久しぶりにときめいたのに」
さも残念そうに悔しがるユリ子。
「まあまあ、それじゃあ僕なんかはどうだい?」
「すいません。私、あんまり年上の人って苦手なんで。ホントにごめんなさい」
西条がここぞとばかりにアピ−ルするが、ユリ子に年上趣味は無いらしい。
「そ、そんな。あんまり年上って……」


ガガ−ンという効果音をバックに西条が固まり、どこから出したのか四角いリングの隅で白くなってしまった。


「へっ、ざまあみろってんだ。早々、若い女が相手してくれるもんかってんだ」
横島がここぞとばかりに反撃する。いつの間にか立ち直ったようだ。
「横島さんもです!!」
おキヌがジト目で横島の耳を引っ張る。
「い、いてて。耳がちぎれちゃうよぉ〜」
横島の悲鳴が部屋中に響き渡り、その横でユリ子が笑って居るのだった。

                     ◆    ◆    ◆


「じゃあ、私この辺で失礼します」
「そ、そう?じゃ、気を付けてね?あ、何かあったらいつでも事務所においでよ。 名刺、渡しておくからさ」
横島が安堵の溜息をひとつついて名刺をユリ子に差し出す。貰った名刺をユリ子はしばし食い入るように眺めると、おキヌの側に寄り何事か囁く。
「おキヌちゃん、今日は退散するけどあきらめたわけじゃないからね。あんなイイ男滅多にいないんだから」
「ほ、本気なの!?」
「モチロン。言っておくけど油断してると攫っちゃうよ。それに同じ顔だしね♪」
青ざめるおキヌにニコニコ笑いながら、指でVサインまで出して宣戦布告するユリ子。
「なになに?どうしたの?」
「な、なんでもありません!」
あわてて横島を遠ざけるおキヌ。その隙に、まだ立ち直っていない西条にユリ子はそそくさと礼を述べて“じゃあ”とひとこと残して去っていったのである。その後ろ姿をおキヌは複雑な顔をして見送ったのだった。そして………


“私は絶対、負けないんだからねぇ〜〜”


と空に向かって誓ったのであった。

〜終〜 


後書きの様な物


最後まで文章を読んでくださった皆さん、ありがとうございます。
私はkuromimiと申します。
この作品は前文にも書きましたが、林原悠様の極楽大奮戦と出会い、感銘と電波を受けて生まれた物です。林原様の書かれる“おキヌ”に惚れ込み、このおキヌと横島のラブラブなSSを書いてみたいと思いたったのがきっかけでした。当初は読み専門で極楽大作戦の二次創作を公開しているサイトを徘徊しているだけであったのです。その様な中で“極楽大奮戦”と“林原悠の煩悩世界”に出会い、そしてご存じの方もいらしゃると思いますが、私がリクエストして書いて頂いた“スク−ルウォ−ズ”を読んで湧いてきた‘書きたい’という思いを林原様に励まされて書き上げました。
この作品は当初、“スク−ルウォ−ズ”に対するお礼の意味合いで林原様に送らせて頂いた物ですが、“私ひとりで読んでお蔵入りにするのがもったいないです”と勿体ない言葉を頂き、それならということで今回の掲載となりました。


さて、ラブラブ(死語かな?)な感じ出てるでしょうか?プロットはすぐに出来たのですが書き上げるのに約2週間、初めての作品にしてはそれなりに書けたと思っているのですが、文法的な物と地の文の情景描写が今ひとつ書ききれませんでした。そして文珠の文字には結構悩みました。自分で書いて初めて解ることって多いですね。二次創作に限らず、文章を書いてる人をあらためて尊敬してしまいました。
ではまたいつかお目にかかれる日まで。


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